今、気になっていることは「住宅ローン減税の申請に必要な書類がもうありません」ですがこんなニュースがあります。

「誰にもルールが分からない」。
この本の一番はじめに書いてある言葉です。
誰にもルールが分からないと言いながら、なぜ"ルール"について語るのか。
ここをよく理解することが本書『魂を売らずに成功する-伝説のビジネス誌編集長が選んだ 飛躍のルール52』(英治出版)を楽しむカギです。
『訳者からのメッセージ』によれば、「この本の原題である『Rules of Thumb』とは、『理論ではなく経験に基づいた法則』といった意味の慣用句」とのこと。
つまり「個人的な経験則を集めた(だけの)本ですよ」とタイトルでうたっているわけです。
実際、本書には著者が結晶化した理論があるわけでもないし、参考文献のリストもありません。
こういう本が尊敬を集めるのは通常は難しいことです。
ネット書店の書評でも「著者が言っていることは個人的な経験に過ぎない」といった批判的なレビューを見かけます。
でも、そんなことは著者は百も承知です。
何しろファスト・カンパニー誌を立ち上げる前にはハーバード・ビジネス・レビュー誌の編集者だった人です。
だからこそ理論化は学者に任せ、自分は実業家としての経験則を世に問うたのでしょう。
誰にもルールが分からない時代だからこそ、自分の経験則を作っていこう、それを共有しながら皆で学び合おう。
著者は『はじめに』で、そう語りかけています。
その率直さと著者自身の豊富な経験が、本書を貴重な学びの書にしています。
わたしがファスト・カンパニー誌を見かけたのは1998年、シリコンバレーの近くで働いていた時期でした。
ビジネス雑誌でありながら論文集でもニュース雑誌でもなく、企業や個人のあり方そのものを問うような特集が多かったように思います。
こう書いてしまうと哲学的な印象を持たれるかもしれませんが、とてもデザイン性の高い雑誌でした。
時々日本に戻るときに、ちょっと見栄を張ってカバンに入れておいたような記憶もあります。
ファスト・カンパニー誌は、創業者の経歴(もう1人の創業者もハーバード・ビジネス・レビュー誌の編集者)やそういった編集姿勢のためか、新進の雑誌ながらいわゆる"大物"のインタビューや寄稿が多いのも特徴でした。
本書でも、トム・ピーターズ、ジム・コリンズ、ムハマド・ユヌス、ダライ・ラマ14世といった著名人の逸話が目白押しです。
プロの編集者である著者の目を通してそういった著名人の考えやエピソードに接することができるのも、この本の魅力です。
●あなたの"ルール"をまとめてみよう
しかし、今回この本を取り上げたのは著名人が多く登場しているからではありません。
著者が1つ1つの経験から学び、それを自分のルールとして昇華させている様子が、持論を育てるべきマネジャーの皆さんの参考になると思うからです。
著者のルールを紹介しましょう。
テーマ別にまとめたものが巻末にありますが、構造がない方が経験則集らしくて面白いので目次から引用します。
タイトルで内容の想像が付くものが多いと思いますので、ざっと目を通して共感できるルールの番号を3つか4つ控えてみてください。
1. ピンチのときこそ、リラックス
2. 有権者の本当の望みを知れ
3. 「目的は何か」を問い続けよ
4. 「解決」より「予防」が安上がり
5. 「現状でのコスト」>「変化に伴うリスク」であれば改革せよ
6. 額縁を変えて絵を見よ
7. 「システム思考」をせよ
8. 新しいカテゴリーをつくれ
9. 「出発点はお金」を肝に銘じよ
10. 「よい答え」より「よい質問」
11. 「どちらか」ではなく「どちらも」選べ
12. 情報の「よしあし」はそれを知る時期で決まる
13. 「ノー」の返事は自分への問いである
14. 安心できるゾーンに留まらない
15. スタート時には「4C」が必要だ
16. ストーリーを語れ
17. 「効率よいもの」より「掘り出しもの」
18. 「知っている」と「やっている」はまるで別物
19. 「雑音」を減らし、「信号」を発せよ
20. 戦略戦ではスピードがカギを握る
21. 「世界の人々を魅了できるか?」と問い続けよ
22. 自分が「本当に売っているもの」を知れ
23. 「朝目覚めさせるもの」と「夜眠れなくするもの」は何か
24. 勝つために、ゲームのルールを変えよ
25. 顧客の期待感をひたすら高めよ
26. 人への投資がお金を生む
27. 「メーガン・スミスの3つのルール」を知れ
28. 「よいデザイン」より「偉大なデザイン」
29. 正しい言葉を正しい位置に
30. 全方位でイノベーションを起こせ
31. 「自分ブランド」の発信法を知れ
32. 「コンテンツ」より「コンテキスト」
33. 演じる自分を自覚する
34. 迷ったときにはシンプルに
35. 忠誠心は「双方向」
36. 「お金」よりも「気持ち」のマネジメント
37. 「適切な資金」を集めよ
38. 目の前の問題からはじめよ
39. 「真剣な遊び」のやり方を知れ
40. ITの真価を考えよ
41. 「リーダーの仕事」について真剣に考えよ
42. 自分と違った人間を大切にせよ
43. 「学歴」と「才能」を混同するな
44. 自分の専門が必要だ
45. 失敗を讃美せよ
46. 現実的な理想主義者となれ
47. 自分を世界の中心に置け
48. 「象徴」となるプロジェクトをつくれ
49. 最後に勝つのは「開かれた人間」
50. 調子のよいときに「強み」を見直せ
51. 仕事に厳しく、ユーモアは忘れずに
52. 至る所に学ぶべき先生が溢れている
「すでにどこかで言われていることばっかりだよね」と読み流すのは簡単なので、ルール18『「知っている」と「やっている」はまるで別物』を実践してみましょう。
いま控えていただいた3つか4つのルールを自分なりにまとめるとしたら、皆さんは何を書きますか?
文献に当たる必要も検索する必要も、ありません。
ルールのタイトルを見て「その通り!」と共感したのであれば、そう思わせる何らかの経験があったはずです。
それを書いてみると、どうなるでしょうか。
以下の3つの問いに答えながらまとめるとよいでしょう。
・そのルールを持つきっかけとなった経験はどのようなものだったか?
・そのルールは、具体的にはどういうものか? 簡潔にリスト化するとどうなる?
・So What?そのルールから何を言いたいのか? それをどう使えばよいのか?
本書の52のルールはすべて、これらの問いに答えるかたちで構成されています(実際には"So What?"という見出しで区切られている、二段構成です)。
先に述べたように、著者はアカデミックな研究成果や他の著作からの引用によってではなく、すべて自分の経験によってこのルールを語っています。
実際に書き出すのは大変かもしれませんが、頭の中でそういった作業をしてから気になるところを読んでいくと、かなり楽しめるでしょう。
著者の経験の豊かさや見識の深さを味わえます。
わたしはまず通読し、『48 「象徴」となるプロジェクトをつくれ』でマイルールを書きました。
本書に戻ってみると、通読したはずだったのに著者とはまったく違う主張をしていて笑ってしまいました。
それでも、自分なりに語れるネタと、そこから自分なりのルールを引き出せたことに満足しています。
●ルールをまとめると自分の判断基準が見えてくる
著者は巻末の『日本版の読者の方へ』で、問いかけます。
「仕事と人生における成功とは何か? そのための新しいルールをわたしたちは見つけることができるだろうか?」と。
わたしなりに考えてみました。
そもそも「仕事と人生における成功とは何か?」を考えてから、そのためのルールを見つける必要は必ずしもありません。
わたしたちの仕事と人生はすでに始まっています。
始まっているどころか、かなり長時間が経過しています。
今はできなくても、こうありたいというルールを暗黙のうちに持っているのではないでしょうか。
そのような個人的なルールを、先に試みたように書き出していくところから始めるといいと思います。
分野はバラバラであっても、個人的なルールを集積していけば、通底する判断基準が見えてくるはずです。
それにかなう道が、その人の「仕事と人生における成功」といえるのではないでしょうか。
【堀内浩二】
(本書は、訳者に献本いただきました)
最終更新:3月1日14時55分
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